ソシエナの生い立ち・・7年前に教会で出会った『あの人』と
たった一人の家族である母親との間で、揺れる想い。
ソシエナが生まれた当時、この町の戦の傷跡は、かなり酷いものでした・・。
父親は、身体に障害を持っていたのにもかかわらず、
戦に駆り出され帰らぬ人となった・・。
母親はそれを町人のせいだと思い込み、
町人を恨み娘を家から出さずに守るように育てました。
ただそれが行き過ぎてしまい、娘に対する愛情が少しずつ虐待に変わっていったのです・・。
町の生活が少し落ち着きを取り戻した頃、
一度だけ、とある楽団がやってきました。
ソシエナが8歳になった時の出来事です。
その楽団はここから遥か先にある王国に向う途中だと言う。
ソシエナはその日、虫の居所が悪かった母親に軽い虐待を受けました。
今までなら黙って我慢していたのに・・その日は勢いで家を飛び出してしまいます。
運命のいたずらだったのでしょうか・・。
普段から外出を許してもらえなかったソシエナには、初めての冒険です。
行く宛てのないソシエナは、ふと目に入った十字架を目印に歩き出しました。
その場所で、今まで見たこともない旅の楽団と出会うことになります。
建物の扉を開け恐る恐る中を覗くと、何人かの人がさまざまな楽器を手に音楽を奏でていました。
娘はすぐにその演奏に惹かれ、夢中で聴き入りました。
その時突然、後ろから肩を「ぽんっ」と叩かれ、はっ!と気付いて振り返ってみると、
優しい表情の男の人が話しかけてきたのです。
「こんにちは、お嬢さん。」
その人はこの楽団の団長と名乗り、ソシエナが家を飛び出した理由を真剣に聞いてくれました。
そして今までの旅の話を聞かせてくれて、ふと手に取った楽器のことも詳しく教えてくれたのです。
「ハープ・・、綺麗な音・・。」
ソシエナは次第に心を開いていきました。
旅の楽団は出会った記念にと言って、軽い演奏会を開いてくれました。
たったひとり、ソシエナのために・・。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付くと辺りはもう暗くなっていました。
「お嬢さん、お家の人が心配してるんじゃないかな?しばらくはこの町にいるから、また明日も遊びにおいで。」
「ほんと?また来てもいいの?」
「ああ、もちろん、明日はこの楽器を一緒にやってみよう。約束だよ」
「うん!約束だよ・・」
その日ソシエナは、この楽団とその1つの楽器に興味を持ったのです。
でも・・、翌日教会へ行くことは出来なかった・・、
その次の日も・・、そのまた次の日も・・。
その日あったことが本当に新鮮で、楽しくて・・嬉しくて・・、
その思い出を早く母親に話してあげたくて・・、
なぜ家を飛び出したのか・・そんなことはすっかり忘れて・・。
やっとの思いで家に着くと、そこには怒りと涙で我を忘れた母親が・・こっちに迫ってきます。
「あんたって子は、どうして私を裏切るの!!、どうして!!」
ソシエナは大怪我を追い、数日間眠り続けました。
目覚めた後もしばらくは安静状態が続いてしまいます。
結局・・あの日の約束は叶えることが出来なかった・・
母親はこれをきっかけに精神異常を起こし、その後2人の生活は変わっていきます。
それから数日後、怪我もだいぶ癒えて歩けるようになったソシエナは、
再びその教会に向かいます。
(もしかしたらまだいるかもしれない・・)
でもそこには楽団の姿は無く、代わりに1通の手紙と1つの楽器が残されていました・・。
あれから7年が過ぎ、ソシエナは今では15歳、
あの日、彼らと出会ったこの教会で今日も歌い続ける・・。
彼らとまた会う日のために、
『あの人』と交わした約束を叶えるために・・。
ソシエナは悩み続ける・・。
望むモノはひとつ・・いや
「望めるモノはひとつ・・だけ」
例え過去に自分を虐待した母であっても、
私のことを本当に愛してくれていた・・。
たった一人の家族に変わりない。
私が『あの人』を追いかければ、母はひとりになってしまう・・。
その葛藤に、決断出来ない自分の不甲斐なさに、
そして、私のために、病気になった母親に対して
「ごめんね・・」と謝ってしまうのです。
この作品で伝えなければならないシーンのひとつがソシエナの過去です。
どうして少女は歌い続けるのか、
どうして少女は悩み続けているのか、
この曲でそれを知ってもらいたかったのです。
曲中で流れる鐘の音は、まだ時計塔が動いていた頃の名残で入れてみました。