『Rose Exs Tia』comments on a song..

5 望むモノはひとつ


ソシエナの生い立ち・・7年前に教会で出会った『あの人』と
たった一人の家族である母親との間で、揺れる想い。

ソシエナが生まれた当時、この町の戦の傷跡は、かなり酷いものでした・・。
父親は、身体に障害を持っていたのにもかかわらず、
戦に駆り出され帰らぬ人となった・・。

母親はそれを町人のせいだと思い込み、
町人を恨み娘を家から出さずに守るように育てました。
ただそれが行き過ぎてしまい、娘に対する愛情が少しずつ虐待に変わっていったのです・・。

町の生活が少し落ち着きを取り戻した頃、
一度だけ、とある楽団がやってきました。
ソシエナが8歳になった時の出来事です。
その楽団はここから遥か先にある王国に向う途中だと言う。

ソシエナはその日、虫の居所が悪かった母親に軽い虐待を受けました。
今までなら黙って我慢していたのに・・その日は勢いで家を飛び出してしまいます。
運命のいたずらだったのでしょうか・・。

普段から外出を許してもらえなかったソシエナには、初めての冒険です。
行く宛てのないソシエナは、ふと目に入った十字架を目印に歩き出しました。

その場所で、今まで見たこともない旅の楽団と出会うことになります。


建物の扉を開け恐る恐る中を覗くと、何人かの人がさまざまな楽器を手に音楽を奏でていました。
娘はすぐにその演奏に惹かれ、夢中で聴き入りました。
その時突然、後ろから肩を「ぽんっ」と叩かれ、はっ!と気付いて振り返ってみると、
優しい表情の男の人が話しかけてきたのです。

「こんにちは、お嬢さん。」

その人はこの楽団の団長と名乗り、ソシエナが家を飛び出した理由を真剣に聞いてくれました。
そして今までの旅の話を聞かせてくれて、ふと手に取った楽器のことも詳しく教えてくれたのです。

「ハープ・・、綺麗な音・・。」

ソシエナは次第に心を開いていきました。
旅の楽団は出会った記念にと言って、軽い演奏会を開いてくれました。
たったひとり、ソシエナのために・・。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付くと辺りはもう暗くなっていました。
「お嬢さん、お家の人が心配してるんじゃないかな?しばらくはこの町にいるから、また明日も遊びにおいで。」
「ほんと?また来てもいいの?」
「ああ、もちろん、明日はこの楽器を一緒にやってみよう。約束だよ」
「うん!約束だよ・・」

その日ソシエナは、この楽団とその1つの楽器に興味を持ったのです。


でも・・、翌日教会へ行くことは出来なかった・・、
その次の日も・・、そのまた次の日も・・。

その日あったことが本当に新鮮で、楽しくて・・嬉しくて・・、
その思い出を早く母親に話してあげたくて・・、
なぜ家を飛び出したのか・・そんなことはすっかり忘れて・・。

やっとの思いで家に着くと、そこには怒りと涙で我を忘れた母親が・・こっちに迫ってきます。
「あんたって子は、どうして私を裏切るの!!、どうして!!」

ソシエナは大怪我を追い、数日間眠り続けました。
目覚めた後もしばらくは安静状態が続いてしまいます。
結局・・あの日の約束は叶えることが出来なかった・・
母親はこれをきっかけに精神異常を起こし、その後2人の生活は変わっていきます。

それから数日後、怪我もだいぶ癒えて歩けるようになったソシエナは、
再びその教会に向かいます。

(もしかしたらまだいるかもしれない・・)

でもそこには楽団の姿は無く、代わりに1通の手紙と1つの楽器が残されていました・・。


あれから7年が過ぎ、ソシエナは今では15歳、
あの日、彼らと出会ったこの教会で今日も歌い続ける・・。
彼らとまた会う日のために、
『あの人』と交わした約束を叶えるために・・。


ソシエナは悩み続ける・・。
望むモノはひとつ・・いや

「望めるモノはひとつ・・だけ」

例え過去に自分を虐待した母であっても、
私のことを本当に愛してくれていた・・。
たった一人の家族に変わりない。
私が『あの人』を追いかければ、母はひとりになってしまう・・。

その葛藤に、決断出来ない自分の不甲斐なさに、
そして、私のために、病気になった母親に対して
「ごめんね・・」と謝ってしまうのです。


この作品で伝えなければならないシーンのひとつがソシエナの過去です。
どうして少女は歌い続けるのか、
どうして少女は悩み続けているのか、
この曲でそれを知ってもらいたかったのです。

曲中で流れる鐘の音は、まだ時計塔が動いていた頃の名残で入れてみました。






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